他言語を話すことの価値は、異文化を知ることの価値を上回るか

4年ぶりに英語を実施 「話す力」は1人1台端末で 全国学力調査(朝日新聞 4月18日)

〇小6と中3を対象とする文部科学省の全国学力調査が18日に行われ、
昨年度と同程度の国公私立の約2万8700校(全体の98%)、200万人余りが参加した。

教科は例年と同じ国語と算数・数学に加え、
中学で4年ぶりに英語を実施。「話す」力を測る出題もあり、
生徒たちは文科省のオンラインシステムを使い、
英語で解答した。結果は7月下旬に公表される。
 
〇英語の「話す」調査では、
生徒はマイク付きヘッドセットを着け、
1人1台の情報端末から文科省のシステムに接続。
流れてくる問題に対し、英語で解答を吹き込んだ。
文科省は2025年度以降、中学からパソコンやタブレット端末を
使った学力調査の出題・解答(CBT)の導入を検討しており、
効果や課題を検証する狙いがある。
 
〇4年前にも「話す」調査があり、
このときは端末に差し込んだUSBメモリーに録音し、
採点する方法だった。
だが、約1万5千人に記録がうまくいかないなどの不具合があった。
今回は、吹き込んだ解答がシステムに記録されているか、
その場で再生して確認できる仕組みを導入。
記録されていなければ改めて吹き込める仕様にしたという。
 
〇ただ、システムへの負荷を考慮し、
「話す」調査については18日は文科省が抽出した
約500校でのみ実施し、その結果を平均正答率などの
「全国値」の集計対象とする。

文科省は「大きなトラブルはなかった」としている。
残りの学校は5月26日までに実施するという。(桑原紀彦)

https://www.asahi.com/articles/ASR4L6JG1R4LUTIL010.html


◇義務教育での英語教育が根本的に変わって、3年以上が経った。
2020年の小学校の学習指導要領から大きく変わった英語教育は、
その移行措置を含めて、英語を「話す」ことにシフトした。

◇それまでの英語教育は、英語圏の文化を知り、
英語という言語が読めて、書けることを主眼としていた。
日本の英語教育は、何年学習しても話せない!という批判が昔からあったが、
それは、英語を話すことに主眼を置いていたわけではないからだった。
それ以上に、英文法をしっかり理解し、読めて書けることを重要視していたのだ。

◇それが、グローバル社会化や産業界からの圧力で、
英会話中心の英語教育に転換したのだ。
その結果は、どうなのか。これが、今回の「話す」調査だ。
この調査の結果は、わからないが、
ここ2年の中学校での英語教育の状況はどうなのかを見ていこう。
学校での定期テスト結果を見てみると、
中学校の英語教育は、英語力の二極化を生んでいると言える。
それも、点数の低い山と点数の中間層の山で形成されている学校が多いようだ。

◇話すという、形のないものを、
英会話スクールなどの小集団や個別指導で行うのならいざ知らず、
30人前後の集団で教えるのだ。
文法という文章の骨格が重要視されることなく、
会話的な授業を行っていくことで、子どもたちは、
どう勉強してよいか、どう復習してよいかを明確にわからず、学習しているのではないか。
出来る山と出来ない山があるのではなく、
中間層の山と出来ない山になっているからだ。

◇これでは、英語力がどんどん低下してしまう。
会話的な授業を進めても、帰っていく(遡行学習していく)ことが出来ないからだ。
文法が中心の授業ならば、帰っていく(遡行学習していく)ことが出来るのだが。

◇そして、もう一つ話すことに対して大きな問題がある。
日本社会は、学校を出れば、英語が話される状況ではない。
つまり、会話的な英語授業だけでは、話すことの定着も難しいといことだ。
そして、今までならば、ある程度の英語文法を学べたはずのものが、
全く学べなくなってしまう可能性があるということだ。

英語に触れるが、英語を理解しない、
そういう状況になってしまう可能性がある。
会話は習うが、英語という言語は知らないという状況になってしまっては、元も子もない。
この点をどう考えるか。「話す」調査がどういう真実を現わしてくれるか。注目したい。