誠意ある行為こそ、教育の目標ではないのか?

選手に負けるようコーチが誘導発言か インターハイ予選 対応協議
(朝日新聞 7月30日)
 
〇全国高校総合体育大会(インターハイ)の卓球埼玉県予選で、
私立高校のコーチが生徒に負けを誘導するような発言をし、
それを問題視した県高校体育連盟(高体連)が対応を検討していることがわかった。
外部の有識者による倫理委員会で指導者への対応や再発防止策を決定するという。
 
〇問題視されているのは6月7日、上尾運動公園体育館
(上尾市愛宕3丁目)であった男子シングルスの試合。
インターハイに出場する県代表7人のうち、残り3人の5〜7位を決める試合で、
埼玉栄3人と県立高校1人の計4人が総当たりで3試合ずつをする予定だった。
 
〇県立高校の生徒は2試合目を終え、2敗していた。
この時点でもう一方の埼玉栄の生徒同士の2試合目は試合中だった。
一人は1試合目で県立高校の生徒に勝って代表が確定し、
もう一人はこの試合に勝てば確定する状況になっていた。
 
〇そこで、コーチがタイム中に、代表が確定している生徒に対し、
負ければ埼玉栄の3人が代表に決まるという状況を説明したという。
説明を受けた生徒が実際に負け、残りの代表3枠は全て埼玉栄に決まった。
この生徒が勝っていれば、3試合目で県立高校の生徒が代表に決まる可能性もあったが、
順位が決定したため、県立高校の生徒は3試合目を棄権した。
 
〇3日後、県立高校の生徒からの連絡で問題を把握した県高体連が、埼玉栄側を調査。
コーチは経緯を認め、生徒は意図的に負けるようにプレーしたことを認めたという。
 
〇県高体連は7月19日、外部の有識者による倫理委員会を設置。
指導者に対してできることも含め、対応を協議中だ。
埼玉栄の林昭雄教頭は「負けを指示したわけではないが、
相手の選手をリスペクトできていなかった。
学園本部にも報告しており、厳正な処置がされることになると思う」と話している。
(杉原里美、恒川隼)

https://www.asahi.com/articles/ASS7Y438BS7YUTNB00DM.html

 今回の記事は、教育の本音と建て前の問題だ。
自分が指導している生徒が試合に勝ち、インターハイに行ってほしいことは理解できる。
それも、インターハイに出場できる枠が残り3枠あって、その全てが、もしかすると自分の教えている生徒が行くことが出来れば、それは、指導者として喜ばしいことだ。
だから、心の中で、何をどう思っても全く責められる筋合いはない。

◇しかし、それを口に出し、生徒に指示をして、わざと負けることを促してしまったら、これは、
その指導者の資質にかかわる問題だし、生徒の努力を否定する大きな問題だ。
本音では、当然、自分の教え子がすべてインターハイに行ければ、それに越したことはないが、そのために、自分の教え子に、わざと負けることを促しては、日々の指導の意味が崩壊し、一人ひとりの生徒の今までの努力が否定されてしまう。

全力を尽くして、試合に臨むという姿勢が建前に矮小化し、どんな手を使っても目的であるインターハイに出場すればよいのだという結果になってしまう。これでは、学校で行う教育行為としての部活ではない。

◇誠意ある行動を私たちが出来るように、教育という行為がある。
社会構成メンバーの一員になる資格とは、誠意ある行動をとれるかどうかだからだ。
そのために、集団生活での学習活動があり、部活動がある。
その部活動で、正しい目的と正しい手段を教えないでどうするのか。
このコーチは、教育の目的を建前としてしか考えてこなかったのかもしれないが、それでは、部活を学校で行う意味はない。
昨今の部活のあり方を、この機会に考えることかもしれない。
なぜ、部活が学校で行われているかを。