本当に所得制限なしの高校無償化は必要なのか?

「高校無償化」は金額示さず、来年度予算の概算要求 政治の結論出ず(朝日聞8月29日)

 文部科学省は29日、来年度予算の概算要求を公表した。高校授業料の無償化の拡大については、政治主導の制度設計が間に合わず、金額を示さない「事項要求」とした。具体的な金額は年末の予算編成までに決めることになる。
 
 無償化の拡大は、2月に自民、公明、日本維新の会の3党が合意して決めた。
所得制限をつけて1人あたり年11万8800円までとしてきた国の支援金を、今年度から所得に関わらず全員に支給している。来年度は、私立生向けの支援金を今より6万1千円多い年45万7千円までとし、所得制限もなくすこととした。
 
 ただ、来年度の制度については、今も自公維が詰めの話し合いを続けている。留学生や外国人学校、通信制高校の取り扱いなどが主な論点。参院選後の政局の動きもあり、概算要求までに結論は出なかった。
 
 文科省は、無償化の経費を来年度も含めた拡大分だけで約4千億円、従来分も合わせて約8千億円と見積もる。文科省全体の概算要求額(一般会計)は6兆599億円(今年度予算より5506億円増)。8千億円は、その約13%に当たる。「省内でやり繰りできる金額じゃない」(担当者)として、文科省は政府全体で財源を確保するよう求める。
 
 一方、高校は受験生向けに、夏に学校説明会を開き、秋に募集要項を出すのが一般的だ。文科省には各地の私立高から「どう説明すればいいのか?」という問い合わせが多いという。担当者は「『予算編成の過程で決まっていくと説明を』としか言えないのが心苦しい」と打ち明ける。

https://www.asahi.com/articles/AST8Y30PLT8YUTIL01SM.html


 高校無償化で一番喜んでいるのは、小学生の子どもを持つ高所得世帯だ。
首都圏の中学受験熱は、今年非常に高くなった。子どもを私立中高一貫校に通わせたい高所得世帯の保護者は、
所得制限の撤廃で、高校3年間は授業料等無償になるのだから、維新の会が言い出したこの高校無償化案は、喜ばしい限りだろう。

 しかし、こんな不平等な案があるだろうか。
所得の低い世帯も高い世帯も、高校進学を金銭面で支援するということが、平等な政策だろうか。
所得の低い世帯の子どもたちは、この支援をそのまま字義通りに活用して高校へと進学し、所得の高い世帯の子どもたちは、この支援を個人的能力拡大のために活用するのだ。結局、親の所得の再生産を強固にする仕組みではないか。つまり、経済格差が大きくなっていく政策ではないか。お金持ちが優位になる政策ではないか。そう思うのだ。

 そして、公立高校と私立高校への格差がどんどん開く政策ではないか。
国や公共団体は、公立高校の充実にお金を使うべき所を、個人の裁量に任せる形で、公立高校と私立高校を自由競争のような恰好へと仕向けているだけだ。子どもたちは、私立高校の充実した設備や、早期で入試が終わる点を良い点だとして、私立高校を選択していくことになるのではないか。

これでは、自由競争などという綺麗事で偽装した公立高校潰してではないか。こんな政策は、必要あるのか。所得制限撤廃こそ、撤廃するべきことではないか。

一般社団法人日本教育コンサルタント協会
代表理事 中土井鉄信