採用スケジュールだけでなく、もっと本質的な議論をしてほしい!

こんにちは。一般社団法人日本教育コンサルタント協会の中土井です。今回は、10月9日の朝日新聞に掲載されていた記事について、ちょっと考えてみます。教員のなり手が少ないので、教員採用試験の時期を前倒しにするという記事です。まずは、記事をご覧ください。 

教員採用試験1~3カ月前倒し案 倍率低迷打開へ文科省

教員採用試験1~3カ月前倒し案 倍率低迷打開へ文科省
 
公立学校教員の採用倍率が低迷しているのは、採用活動が早い民間企業に流れているのが一因だとして、文部科学省は19日、秋に合格が決まる現在の教員採用試験の日程を1~3カ月前倒しする案を明らかにした。今後、採用試験の実施主体である教育委員会と協議を重ね、来年5月をめどに方針を取りまとめる考え。早ければ2025年度採用の試験から前倒しを実現させたいとしている。

文科省は試験の早期化などの枠組みについて都道府県や政令指定市の教育委員会、大学関係者と話し合う協議会を設置し、この日あった初会合で前倒し案を示した。

公立学校教員の採用倍率は近年、右肩下がりの状況だ。小学校の今年度採用の倍率は2・5倍で過去最低を更新。中学校は4・7倍で過去3番目、高校は5・4倍で過去2番目に低かった。受験者の減少に歯止めがかかっておらず、文科省は新卒採用試験のスケジュールが民間企業や一般公務員の採用より遅いことが一因にあるとみている。
 
就職情報会社の調査によると、今年6月1日時点の大学生の内定率は73%。また、主に大卒対象の地方公務員の合格発表は8月ごろ、国家公務員総合職の合格発表は6月にある。これに対し、文科省の調べでは各教委が6月の第3週以降に1次試験(筆記)を実施し、9割弱が9月下旬以降に合格発表を設定していた。
 
このため、中央教育審議会(文科相の諮問機関)の部会などの場で、有識者から「教員志望の学生が、早く内定が出る民間に就職先を決めてしまう」「志願者減少の理由の一つにスケジュールがあるとすれば、早く解消すべきだ」といった指摘が出ていた。
 
19日の協議会で文科省は、
① 地方公務員試験を目安に、1次試験を5月から始め8月ごろに合格発表
② 国家公務員試験を目安に、1次試験を4月から実施し7月中から合格発表を始める
という2案を提示。これをもとに議論を進め、来年5月ごろには方針をまとめる意向を示した。
 
公立校の教員は、教育公務員特例法に基づき都道府県や政令指定市の教委が採用するため、試験日程の設定は各教委の裁量に委ねられる。文科省は協議会での議論を通じて前倒しを促していきたい考えだ。(桑原紀彦)

引用元記事(朝日新聞デジタル 10月19日) :https://www.asahi.com/articles/ASQBM63M3QBMUTIL01D.html

私のコメント

学校の先生のなり手がいない。もう何年も前から言われているところだが、それは、就活のスケジュール的なところもあるが、それ以上に、学校の先生が職業として魅力的に映らないからだ。子どもたちと接する学校の先生が、魅力的であれば、その先生のようになりたいと思えるだろう。

がしかし、昨今の学校事情は、そのような状況ではない。昔は?と思うかもしれないが、1980年代までの学校の先生は、酷い先生から素晴らしい先生まで、実に多種多様に存在していた。だから、ロールモデルになりえる先生も、反面教師になりえる先生も共にいたのだ。それが、1990年代に不適格教員狩りが始まって、教員の社会的な地位が大きく下がり、教員を見る目が厳しくなり、学校の先生は、自分を守りながら、子どもたちのために業務をしている。または、仕事と割り切って、業務をこなしているようになったのだ。また、学校内部も管理的になってしまった。

昨今の社会的な風潮も原因の一つだ。就活する大学生は、大義名分よりも、この仕事が費用対効果の高いものかどうかを考えながら(無意識のうちに、大変か・大変じゃないか。かっこ良いか・悪いか。社会的に自慢できるか・出来ないか。等々)、職探しをしているからだ。教職が、そのような費用対効果の高い職業ではない。だから昔は、教職は、聖職だと言って、社会的に意義のある職業だとみなされ、子どもたちのなりたい職業の一つに入っていたが、それもなくなってしまった。

教職がただの職業になってしまったために、大学で、教職課程を取っても(教育学部にいっても)、教職課程の学びの中で、社会的に意義の高い職業だとは、教えられないか、教えられても薄っぺらいものになった。また、教育実習に行ったら行ったで、学校の世界や先生方の人間関係に幻滅をして、簡単に民間に志望を変えてしまう、このようなケースも多くなった。簡単に言えば、このような状況だからこそ、先生のなり手が少なくなったのだ。

だから、スケジュールの変更問題と並行して、教育の社会的意義を高める施策を考えることだ。貶めた先生の社会的に地位を回復することだ。そのために何が出来るかを考えることを忘れないでほしい。